悪く面と向って言われては口惜し涙も落ちます。私はその日|良則《よしのり》の生菓子を持たせて使の者に手紙を添えて先方へやりまして、女子の身で絵の修業の熱心なあまりとは申しながら、端無《はしたな》い出過ぎたお邪魔をしまして済みませぬでした、と謝まってやりますと、改まって挨拶されて見ますと、先方も気づつなくなりましたものか、葉書を寄こしたりしまして、その次からは「おいでやす。さアどうぞ」などとお愛想を言ってくれられたりするほどにもなりまして、それがまた、かえって気の毒になったこともありました。
博物館
博物館は私にとりまして何より大切な勉強場でございました。
一年の計は元日にあり、ということですから今年は一つ元日から勉強してやりましょう、というような感激に満ちた気持ちで、お屠蘇《とそ》を祝うと朝から博物館に通ったこともありました。近い頃ですと、お正月五日間ぐらい博物館もお休みでございますが、その頃は正月もお休みなしで、よくその年の干支《えと》の絵を並べられたりしてありました。私は今でも忘れませぬが、ある年の元日のこと、大元気で起きて見ますと、一夜のうちに大雪になっていまし
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