絹と紙の話と師弟の間柄の話
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)涸《か》らした

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)どうさ[#「どうさ」に傍点]
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 二、三年前竹杖会の研究会で年に二点は大小に拘わらず是非出品しなければいけないという規則が出来ましたので、いつぞや小品を一点持出したことがあります。ほんの小さな絵でしたがそれには土坡があって葦が生えているような図が描いてあったのです。ところがそれを見られて土田麦僊さんが不思議そうな顔付きで、この土坡の墨味がこういう風にムクーッと柔かくいってるのは一体どんな風にしてやられたのです、というお訊ねでした。それで私は、どんな風もこんな風も描き方には何も変った方法などありませぬ。唯この絹地は少し涸《か》らした生絹に湯引きをしたのを使用してますので、それが真新しい生絹やどうさ[#「どうさ」に傍点]引などに較べますとややそうした味が出て来るのかと思います、という返事をしたことでした。
 その時新しい絹と涸らした絹との話も出たと思いますが、私は近年、いつからともなく絹を涸らして使う習慣を
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