持っています。涸らして使うというのは新しい絹をすぐ使わないで、暇のある時に何枚も何枚も枠張りしてその儘ほって置くのです。必ずそうした絹にばかり描いてるわけでもありませぬが、大体そうしたのを使います。それに又暇の時にはそうした絹にどうさ[#「どうさ」に傍点]を引いたり湯引きをして置きます。古いのになりますと二、三年ぐらいほってあるものもあります。そうしますと、枠張りが何処となく落着いて、叩いてもボンボンと太鼓でも叩くような張り切った感じがぬけて、何処となく柔かくむっくりして参ります。どうさ[#「どうさ」に傍点]にしても引き立てですと、いやにギラギラと光ってけばけばしい感じのするものですが、それも涸れて生々しい硬さが抜けて来ます。総じて真新しいものに較べて柔かみのある落着いた感じのするものとなります。
どうさ[#「どうさ」に傍点]を引き立ての新しい絹に描いてる感じは、何となく絹の上っ面を辷って、兎もすると撥ね返りでもする程の上っすべりのする感じですが、それが絹なりどうさ[#「どうさ」に傍点]なりの涸れたのですと一本の線にしましても引いてる片ッ端から、じっくりと絹の内らに浸み込みでもするよ
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