います。金剛先生なども、あなたが謡っている態度をみていると実に心の底から愉快でたまらぬといったように思える、それが何よりいいのですと言っておられます。

     五

 この気持も、画の制作の場合と同じだと私は思っています。

 画を制作する、謡の修業をする、決して苦しくないことはないものです。しかし、作家はその苦しみを楽しむ――そういう気持ちが制作の上の、第一の条件ではないかと思うのです。
 近頃、制作の苦しみだけを高唱している若い作家が少なくないというようにも聞きます。で、私は、その苦しみを楽しみうる作家こそは、真の作家の襟度《きんど》であるということをここに申してみたいつもりなのです。



底本:「青眉抄・青眉抄拾遺」講談社
   1976(昭和51)年11月10日初版発行
   1977(昭和52)年5月31日第2刷
初出:「大毎美術 第十四巻第二号」
   1935(昭和10)年2月
入力:川山隆
校正:鈴木厚司
2008年7月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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