したが、少しぐらい、上がり下がりがあろうと、本人はよい心持で精一杯謡っているのですから、何の心配もなく楽しいのでございます。
八方に耳と目を働かす
画を描くには、いつもよほど耳と目を肥やしておかなくてはならないようでございます。若い時は市村水香先生に漢学を、長尾雨山先生に漢詩の講義など聴いて勉強いたしました。時代時代の衣裳の研究に、染色祭の時などいろいろな陳列がありますから見にまいります。打掛、加賀友禅、帷子《かたびら》などが見られます。芝居へも行きますが、他の方のように気楽に楽しんで見られず、いつも肩を張らして見てきます。美しいある瞬間を、スケッチに捉えます。衣裳風俗も覚えてまいります。時には映画も、見にまいります。猛獣の写真、海底の採魚など生態がわかって、面白うございますし、美しい景色の画面と人物は、よい参考になるものでございます。今、流行の衣裳の陳列会も見逃しません。美術クラブ、公会堂、八坂クラブなどで催されますが、忙しい時は、日に三ヵ所も見て回ることがございます。
ずっと見通しますと、今年の最新流行の色はこう、古典味のある流行色はこうと、よくわかります。また、
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