図案の会、陶磁器の会、彫刻の会なども見て置きます。
絵三昧の境地
絵筆を持って五十年、今の私は筆を持たない日とてはありません。何の雑念もなくひたすら画の研究にいそしんでおります。筆を持っている時が一番楽しく、貴く、神の心にピッタリ適《かな》っているような、大丈夫の心持でございます。絵三昧に入っているのであります。画壇の揉《も》めごとも、対岸の火事を眺める気持がして、その渦中には入れません。この境地に入るまでには、人生には雨があり風があり、沈むばかりに船が傾くことがありますように、私もさまざまな艱難辛苦の時を経てまいりました。ある時は芸術的な行き詰まりに、ある時は人間的な悩みに、これほど苦しむなら生きているより死んだ方が、楽に違いないと本気で思ったことが、幾度もございました。そんな所を、幾度も通り抜けますと、人はほんとうに、強く強く生きられるものでございます。今思いますと、若い時の沢山の苦しみが積み重なり、一丸に融《と》け合って、ことごとく芸術的に浄化されて、今の境地が作り出されたのではないかと思われてなりません。
私の心は一日中画のことでいっぱいです。夜は殊にそうでご
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