な不満なものがあるからだともいえましょう。

     若い女性の画家志願に就いて

 男性に較べると女性が絵の修業をするのには、特別にいろいろな困難が伴います。私の家にも何十人かの若い女性《おんな》の方が稽古に見えるが、その中に一人や二人はすべてをすてて一生を絵で立て通そうと、本人も決心し親達もその気になってる人がないでもないが、一般に言えば女性だと年頃になったりすると家庭の事情や何かで、どうしても初志を立て通すことが難しくなり易いようです。
 一芸を立て通すとなれば男性《おとこ》の方でもそうに違いないが、殊に女性だとより以上に意志が強くないと駄目だと思います。懸命の努力勉強も、誰にだって負けるものかという固い決心強い意志も、常人以上の人でないと、若い志願者からの相談に会っても容易に勤められもせず、中途半端では却って気の毒な結果に陥りたがるものです。よく私共のところにも遠方の見ず知らずの若い人達から手紙が来たりして、どんな苦労でもするから台所で働かして貰いながら絵の勉強をさしてくれなどと言って来られるが、たいてい返事も上げないことにしている。それも二度三度となると返事をしないわけにも
前へ 次へ
全11ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
上村 松園 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング