画室談義
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)凝視《みつ》めている

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)つくったさいはらい[#「さいはらい」に傍点]、
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 いつだったか、ある東京の婦人雑誌の記者が数人見えて、私のいろいろな生活を写真に撮られたり記事にして行かれたことがあった。
 その折り、私の画室の内部も写真に撮りたいということを言われて非常に困りました。何分私の画室というのは、私以外誰ひとりとして、たとえ家族の者や孫たちでもみだりに出入りさせぬことになっている、まあ私個人の専有の仕事部屋であり、私にとってはかけ換えのない神聖な道場とも考えている処でありますからその理由を述べてお断わりしたのですが、再三たっての頼みに敗かされて内部を見せて写真も撮らせましたが、大へん困却した感じを強くしたことは今でも忘れません。
 それからもいろいろな処から、あるものは研究心から、あるものは単なる好奇心、興味心から同じような頼みを持ってこられる人が時々ありましたが、出来得る限りお断わりし続けて来ました。これからもそのような依頼には応じ
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