わが母を語る
上村松園
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)焙炉《ほいろ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](昭和二十四年)
−−
竹を割ったような性格
私の母は、一口にいうと男勝りな、しっかり者でしたな。私は母の二十六歳の時生まれ、四つ年上の姉が一人だけありました。私の生まれたのは、明治八年四月二十三日、私の父が死んだのが同じ年の二月。つまり母は、主人を失ってから私を生んだわけです。父は四条御幸町に店を構え、茶舗を創めたばかりのところでした。そんな時に、父が亡くなったのですから、親類、母屋の人々は「二十六歳の若さで子供二人抱えて、とても、店を張ってやってゆけるものではない。店はやめて小そうなれ」と言う。けれど気丈な母は、せっかく主人の創めた仕事だし、今店をやめて小さく暮しては、いつ大きくなれよう。何としてもこのまま店を張ってゆきたいと考え「大事おへん。店はやってゆきます」と親類の人に言い切ってしまいました。
こう言ったからには、誰に一厘の厄介もかけることはできないと思い定め、一人の丁稚を追いまわし
次へ
全9ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
上村 松園 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング