「汐くみ」の画に就いて
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)有《も》って

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)到底|出来難《できがた》い
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「汐くみ」は私としては相当に苦心を費やし、努力を払うた作品でございます。殊にこの画について心を用いた点は色調でございました。しかしいったいの釣合をとるためには、幾遍も素描をやり直しまして、自分自身でやや満足出来るものに致しましてから、本当に筆を執ったのでございます。

 この画は、大作ではありませんけれども、全体に於て私自身の有《も》って居ります考えなり筆なりを、自分でやや満足し得ますところまで現《だ》し得たものと信じて居ります。もっとも自分自身で満足するほどの作品というものは、到底|出来難《できがた》いものでございますから、厳密に申しますと、この「汐くみ」だからと申しまして決して十分のものではございませんが、それでも自分では相当の努力を致したものということだけは申されるだろうと思います。

「汐くみ」は舞踊でございまして、なかなか優美なものです。蜑女《あま》の所作を美化したものですが、こ
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