ういう画はどちらかと言いますと損な画で、いわゆる新しい様式のものではございません。新しい様式でないどころか、極めて古い描写のしかただと申されましょう。しかし私は常に考えて居りますことは、この古い様式の画を、私どもぐらいが守って居りませんと、新しい画|流行《ばや》りの現代では、誰もこういうものを描く人がなくなって、やがて美人画は跡を断つに至るだろうと思います。

 いわゆる旧来の美人画は、画の批評家達はその芸術価値についていろいろ申されますが、私はこの特異の純日本風美人画を亡ぼすことが心に忍びません。もちろん時代の趨勢でございますから、新しい美人画――美人画と言いましょうか、兎に角女性画の描写法の変ってゆくことは当然でございます。けれど同時に私は、旧来の日本風の美人画というものを亡ぼしたくないと存じます、亡ぼしたくはないばかりか、先輩の大家方や後進の人々が、もう少し美人画というものを認めて、奨励もし研究もして頂きたいと思います。

「汐くみ」は私が相当努力を払った作品と申しました。もっとも私は従来とても、胡魔化しや間に合わせの画は、なるべく描いたことはございません。今度の大震災で人心が一
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