二十四日。 なし。
二十五日。
「金魚も、ただ飼い放ち在るだけでは、月余の命、保たず。」(その一。)
われより若きものへ自信つけさせたく、走り書。断片の語なれども、私は、狂っていません。
社会制裁の目茶目茶は医師のはんらんと、小市民の医師の良心に対する盲目的信仰より起った。たしかに重大の一因である。ヴェルレエヌ氏の施療病院に於ける最後の詩句、「医者をののしる歌。」を読み、思わず哄笑《こうしょう》した五年まえのおのれを恥じる。厳粛の意味で、医師の瞳の奥をさぐれ!
私営脳病院のトリック。
一、この病棟、患者十五名ほどの中、三分の二は、ふつうの人格者だ。他人の財をかすめる者、又、かすめむとする者、ひとりもなかった。人を信じすぎて、ぶちこまれた。
一、医師は、決して退院の日を教えぬ。確言せぬのだ。底知れず[#「底知れず」に傍点]、言を左右にする。
一、新入院の者ある時には、必ず、二階の見はらしよき一室に寝かせ、電球もあかるきものとつけかえ、そうして、附き添って来た家族の者を、やや、安心させて、あくる日、院長、二階は未だ許可とってないから、と下の陰気な十五名ほどの患者と同じの病棟へ投
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