なしかった。丈夫になろうと思いました。
月 日。
恥かしくて恥かしくてたまらぬことの、そのまんまんなかを、家人は、むぞうさに、言い刺した。飛びあがった。下駄はいて線路! 一瞬間、仁王立ち。七輪《しちりん》蹴《け》った。バケツ蹴飛ばした。四畳半に来て、鉄びん障子《しょうじ》に。障子のガラスが音たてた。ちゃぶ台蹴った。壁に醤油。茶わんと皿。私の身がわりになったのだ。これだけ、こわさなければ、私は生きて居れなかった。後悔なし。
月 日。
五尺七寸の毛むくじゃら。含羞《がんしゅう》のために死す。そんな文句を思い浮べ、ひとりでくすくす笑った。
月 日。
山岸外史氏来訪。四面そ歌だね、と私が言うと、いや、二面そ歌くらいだ、と訂正した。美しく笑っていた。
月 日。
語らざれば、うれい無きに似たり、とか。ぜひとも、聞いてもらいたいことがあります。いや、もういいのです。ただ、――ゆうべ、一円五十銭のことで、三時間も家人と言い争いいたしました。残念でなりません。
月 日。
夜、ひとりで便所へ行けない。うしろに、あたまの小さい、白ゆかたを着た細長い十五六の男の児が立っている。い
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