っている。
月 日。
この一年間、私に就《つ》いての悪口を言わなかった人は、三人? もっと少ない? まさか?
月 日。
姉の手紙。
「只今、金二十円送りましたから受け取って下さい。何時《いつ》も御金のさいそくで私もほんとに困って居ります。母にも言うにゆわれないし、私の所からばかりなのですから、ほんとうにこまって居ります。母も金の方は自由でないのです。(中略。)御金は粗末にせずにしんぼうして使わないといけません。今では少しでも雑誌社の方から、もらって居るでしょう。あまり、人をあてにせずに一所けんめいしんぼうしなさい。何でも気をつけてやりなさい。からだに気をつけて、友だちにあまり附き合ない様にしたほうが良いでしょう。皆に少しでも安心させる様にしなさい。(後略。)」
月 日。
終日、うつら、うつら。不眠が、はじまった。二夜。今宵、ねむらなければ、三夜。
月 日。
あかつき、医師のもとへ行く細道。きっと田中氏の歌を思い出す。このみちを泣きつつわれの行きしこと、わが忘れなば誰か知るらむ。医師に強要して、モルヒネを用う。
ひるさがり眼がさめて、青葉のひかり、心もとなく、か
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