か。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
玄関を乱暴にあける音聞える。
「電報です。島田数枝さん。電報です。」という配達人の声。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
(数枝) あら、あたしに電報。いやだ、いやだ。ろくな事じゃない。いまの日本の誰にだって、いい知らせなんかありっこないんだ。悪い知らせにきまっている。(うろついて、手にしているたくさんの紙片を、ぱっと火鉢に投げ込む。火焔《かえん》あがる)ああ、これも花火。(狂ったように笑う)冬の花火さ。あたしのあこがれの桃源境も、いじらしいような決心も、みんなばかばかしい冬の花火だ。
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玄関にて、「電報ですよ。どなたか、居りませんか。島田数枝さん。至急報ですよ。」という声つづくうちに、
[#ここで字下げ終わり]
[#地から3字上げ]――幕。
底本:「太宰治全集8」ちくま文庫、筑摩書房
1989(平成元)年4月25日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版太宰治全集」筑摩書房
1975(昭和50)年6月から1976(昭和5
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