り、汚い部屋に案内され、ゲートルを解きながら、お酒を、と言つた。すぐにお膳とお酒が出た。意外なほど早かつた。私はその早さに、少し救はれた。部屋は汚いが、お膳の上には鯛と鮑の二種類の材料でいろいろに料理されたものが豊富に載せられてある。鯛と鮑がこの港の特産物のやうである。お酒を二本飲んだが、まだ寝るには早い。津軽へやつてきて以来、人のごちそうにばかりなつてゐたが、けふは一つ、自力で、うんとお酒を飲んで見ようかしら、とつまらぬ考へを起し、さつきお膳を持つて来た十二、三歳の娘さんを廊下でつかまへ、お酒はもう無いか、と聞くと、ございません、といふ。どこか他に飲むところは無いかと聞くと、ございます、と言下に答へた。ほつとして、その飲ませる家はどこだ、と聞いて、その家を教はり、行つて見ると、意外に小綺麗な料亭であつた。二階の十畳くらゐの、海の見える部屋に案内され、津軽塗の食卓に向つて大あぐらをかき、酒、酒、と言つた。お酒だけ、すぐに持つて来た。これも有難かつた。たいてい料理で手間取つて、客をぽつんと待たせるものだが、四十年配の前歯の欠けたをホさんが、お銚子だけ持つてすぐに来た。私は、そのをばさんか
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