津軽
太宰治

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)小粋な業《わざ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)白髪|逓《たがひ》に相驚く。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+雷」、第4水準2−93−86]
−−

[#ここから8字下げ、ページの左右中央に]

津軽の雪
 こな雪
 つぶ雪
 わた雪
 みづ雪
 かた雪
 ざらめ雪
 こほり雪
  (東奥年鑑より)

[#ここで字下げ終わり]
[#改丁]

序編


 或るとしの春、私は、生れてはじめて本州北端、津軽半島を凡そ三週間ほどかかつて一周したのであるが、それは、私の三十幾年の生涯に於いて、かなり重要な事件の一つであつた。私は津軽に生れ、さうして二十年間、津軽に於いて育ちながら、金木、五所川原、青森、弘前、浅虫、大鰐、それだけの町を見ただけで、その他の町村に就いては少しも知るところが無かつたのである。
 金木は、私の生れた町である。津軽平野のほぼ中央に位し、人口五、六千の、これ
次へ
全228ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング