立ちどまつて煙草をふかし、四方八方を眺めながら、いい加減の感想をまとめてゐた。私は自信ありげに、一同を引率し、溜池のほとりを歩いて、
「ここがいい。この辺がいい。」と言つて池の岬の木蔭に腰をおろした。「アヤ、ちよつと調べてくれ。これは、ウルシの木ぢやないだらうな。」ウルシにかぶれては、私はこのさき旅をつづけるのに、憂鬱でたまらないだらう。ウルシの木ではないと言ふ。
「ぢやあ、その木は。なんだか、あやしい木だ。調べてくれ。」みんなは笑つてゐたが、私は真面目であつた。それも、ウルシの木ではないと言ふ。私は全く安心して、この場所で弁当をひらく事にきめた。ビールを飲みながら、私はいい機嫌で少しおしやべりをした。私は小学校二、三年の時、遠足で金木から三里半ばかり離れた西海岸の高山といふところへ行つて、はじめて海を見た時の興奮を話した。その時には引率の先生がまつさきに興奮して、私たちを海に向けて二列横隊にならばせ、「われは海の子」といふ唱歌を合唱させたが、生れてはじめて海を見たくせに、われは海の子白波の騒ぐ磯辺の松原に、とかいふ海岸生れの子供の歌をうたふのは、いかにも不自然で、私は子供心にも恥かし
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