参考書でも無いでせうか。」
「さあ、」と兄は笑ひ、「わたしも、どうも、郷土史にはあまり興味が無いので。」
「津軽名所案内といつたやうな極く大衆的な本でも無いでせうか。まるで、もう、何も知らないのですから。」
「無い、無い。」と兄は私のずぼらに呆れたやうに苦笑しながら首を振つて、それから立ち上つてお婿さんに、
「それぢやあ、わたしは農会へちよつと行つて来ますから、そこらにある本でも御覧になつて、どうも、けふはお天気がわるくて。」と言つて出かけて行つた。
「農会も、いま、いそがしいのでせうね。」と私はお婿さんに尋ねた。
「ええ、いま、ちやうど米の供出割当の決定があるので、たいへんなのです。」とお婿さんは若くても、地主だから、その方面の事はよく知つてゐる。いろいろこまかい数字を挙げて説明してくれたが、私には、半分もわからなかつた。
「僕などは、いままで米の事などむきになつて考へた事は無かつたやうなものなのですが、でも、こんな時代になつて来ると、やはり汽車の窓から水田をそれこそ、わが事のやうに一喜一憂して眺めてゐるのですね。ことしは、いつまでも、こんなにうすら寒くて、田植ゑもおくれるんぢやない
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