木へ来た時、兄の持つてゐる綾足の画を見せてもらつて、はじめて、津軽にもこんな偉い画家がゐたといふ事を知つた次第なのである。
「あれは、また、べつのもので。」と兄は全く気乗りのしないやうな口調で呟いて、椅子に腰をおろした。私たちは皆、立つて屏風の絵を眺めてゐたのだが、兄が坐つたので、お婿さんもそれと向ひ合つた椅子に腰をかけ、私は少し離れて、入口の傍のソフアに腰をおろした。
「この人などは、まあ、これで、ほんすぢでせうから。」とやはりお婿さんのはうを向いて言つた。兄は前から、私には、あまり直接話をしない。
さう言へば、綾足のぼつてりした重量感には、もう少しどうかするとゲテモノに落ちさうな不安もある。
「文化の伝統、といひますか、」兄は背中を丸めてお婿さんの顔を見つめ、「やつぱり、秋田には、根強いものがあると思ひます。」
「津軽は、だめか。」何を言つても、ぶざまな結果になるので、私はあきらめて、笑ひながらひとりごとを言つた。
「こんど、津軽の事を何か書くんだつて?」と兄は、突然、私に向つて話しかけた。
「ええ、でも、何も、津軽の事なんか知らないので、」と私はしどろもどろになり、「何か、いい
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