、お寺へはひつて坊さんの説明でも聞きませう。」
 私は気が重かつた。しぶしぶN君の後について行つたが、それから、実にひどいめに逢つた。お寺の坊さんはお留守のやうで、五十年配のおかみさんらしいひとが出て来て、私たちを本堂に案内してくれて、それから、長い長い説明がはじまつた。私たちは、きちんと膝を折つて、かしこまつて拝聴してゐなければならぬのである。説明がちよつと一区切ついて、やれうれしやと立上らうとすると、N君は膝をすすめて、
「しからば、さらにもう一つお尋ねいたしますが、」と言ふのである。「いつたい、このお寺はテイデン和尚が、いつごろお作りになつたものなのでせうか。」
「何をおつしやつてゐるのです。貞伝上人様はこのお寺を御草創なさつたのではございませんよ。貞伝上人様は、このお寺の中興開山、五代目の上人様でございまして、――」と、またもや長い説明が続く。
「さうでしたかな。」とN君は、きよとんとして、「しからば、さらにお尋ねいたしますが、このテイザン和尚は、」テイザン和尚と言つた。まつたく滅茶苦茶である。
 N君は、ひとり熱狂して膝をすすめ膝をすすめ、つひにはその老婦人の膝との間隔が紙一
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