俗天使
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)箸《はし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)英仏|婉曲《えんきょく》に拒否す。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
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晩ごはんを食べていて、そのうちに、私は箸《はし》と茶碗《ちゃわん》を持ったまま、ぼんやり動かなくなってしまって、家の者が、どうなさったの、と聞くから、私は、あ、厭《あ》きちゃったんだ、ごはんを、たべるのが厭きちゃったんだ、とそう言って、そのことばかりでは無く、ほかにも考えていたことがあって、それゆえ、ごはんもたべたくなくなって、ぼんやりしてしまったのであるが、けれども、それを家の者に言うのは、めんどうくさいので、もうこのまま、ごはんを残すから、いいかね、と言ったら、家の者は、かまいません、と答えた。傍にミケランジェロの「最後の審判」の大きな写真版をひろげて、そればかりを見つめながら箸を動かしていたのであるが、図の中央に王子のような、すこやかな青春のキリストが全裸の姿で、下界の動乱の亡者《もうじ
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