うに失礼しました。いつもは、あんなじゃないのですから、こわがらないで、どんどん宿へ遊びに来て下さいって。」
「でも、言っていましたよ。仕事の邪魔になるから、宿へ来るなって言われたので、そのうちお仕事がすんでから、みんなで御岳《みたけ》へ遊びに行くんだ、とそう言っていましたよ。」
「そうか。そんな、ばかなこと私が言ったのかねえ。仕事のほうは、どうにでも都合がつくのだから、御岳へでも、どこへでも、きっと一緒に行きます、とそう言って下さい。私は、いつでもいいんです。早いほどいいなあ。二、三日中に行きたいなあ。どうでも、そこは、あなたたちの都合のいいように、とそう言って下さい。私は、ほんとうに、いつでもいいのですからね。」むきになっていた。
「承知しました。僕も一緒に行くんです。これからも、よろしく。」へんな、どぎまぎした挨拶だったので、私は、郵便屋さんの顔を見直した。まっかになっている。
私は、ちょっと考えて、すぐわかった。この郵便屋さんと、あの少女とでは、きっと、つつましく、うまく行くだろうと思った。少し侘《わ》びしく、戸惑いした私の感情も、すぐにその場で、きれいに整理できた。それは、そ
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