に負けじと美しく装い茶の湯、活花《いけばな》など神妙らしく稽古《けいこ》して、寝物語に米味噌の事を言い出すのは野暮とたしなみ、肥桶をかついで茶屋遊びする人は無いものだという事もわかり、殊《こと》にも悋気はあさましいものと深く恥じ、
「あたしだって、悋気をいい事だとは思っていなかったのですけれど、お父さんやお母さんがお喜びになるので、ついあんな大声を挙げてわるかったわね。」と言葉までさばけた口調になって、「浮気は男の働きと言いますものねえ。」
「そうとも、そうとも。」男はここぞと強く相槌《あいづち》を打ち、「それについて、」ともっともらしい顔つきになり、「このごろ、どうも、養父養母が続いて死に、わしも、何だか心細くて、からだ工合いが変になった。俗に三十は男の厄年《やくどし》というからね、」そんな厄年は無い。「ひとつ、上方《かみがた》へのぼって、ゆっくり気保養でもして来ようと思うよ。」とんでもない「それについて」である。
「あいあい、」と女房は春風駘蕩《しゅんぷうたいとう》たる面持《おももち》で、「一年でも二年でも、ゆっくり御養生しておいでなさい。まだお若いのですものねえ。いまから分別顔し
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