来ませんでしたという口上で、三人はそれを聞いて利左の行末を思い、いまさらながら、ぞっとして、わが身の上も省《かえりみ》られ、ああ、もう遊びはよそう、と何だかわけのわからぬ涙を流して誓約し、いよいよ寒さのつのる木枯しに吹きまくられて、東海道を急ぎに急ぎ、おのおのわが家に帰りついてからは、人が変ったみたいにけち臭くよろずに油断のない男になり、ために色街は一時さびれたという、この章、遊興もほどほどに止《とど》むべしとの戒歟《いましめか》。
[#地から2字上げ](置土産、巻二の二、人には棒振虫同前に思はれ)
[#改ページ]

   吉野山

 拝啓。その後は、ごぶさたを申して居《お》ります。めでたく御男子御出生の由《よし》、大慶に存じます。いよいよ御家運|御隆昌《ごりゅうしょう》の兆《きざし》と、おうらやましく思います。御一家いきいきと御家業にはげみ、御夕食後の御団欒《ごだんらん》はまた格別の事でありましょう。このお正月は御男子御出生と二つお目出度が重《かさな》り、京の初春もわがものと思召《おぼしめ》し、ひとしお御一家の笑声も華やかに、昔の遊び仲間も集り、都の極上の酒を酌交《くみかわ》し、とか
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