も笑わず溜息をつき、「わしはもう、きょうから遊びをやめるよ。卒堵婆小町《そとばこまち》を眼前にありありと見ました。」
「出家でもしたいところだね。」と六右衛門はひとりごとのように言い、「わしはもう殺されるのではないかと思った。おちぶれた昔の友達ほどおそろしいものはない。路《みち》で逢っても、こちらから言葉をかけるのは遠慮すべきものかも知れない。誰だい、一ばん先に言葉をかけたのは。」
「わしではないよ。」と吉郎兵衛は口をとがらせて言い、「わしは、ただ、吉州にひとめ逢いたくて、それで。」と口ごもった。
「お前だよ。」と甚太夫は冷静な口調で、「お前が一ばんさきに走って行って、一ばんさきに声をかけて、おまけに、また、あいつの家へ連れて行ってくれなんて、つまらぬ事を言い出したのも、みんなお前じゃないか。つつしむべきは好色の念だねえ。」
「面目ない。」と吉郎兵衛は、素直にあやまり、「以後はふっつり道楽をやめる。」
「改心のついでに、その足もとに散らばっているお金を拾い集めたらどうだ。」と六右衛門は、八つ当りの不機嫌《ふきげん》で、「これだって天下の宝だ。むかし青砥左衛門尉藤綱《あおとさえもんのじょ
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