》の下をくぐって突き当りのあばらやの、窓から四歳の男の子が、やあれ、ととさまが、ぜぜ持ってもどらしゃった、と叫ぶもふびん、三人の足は一様に立ちすくんだ。利左は平気を装い、
「ここだ、この家だ。三人はいったら、坐《すわ》るところが無いぞ。」と笑い、「おい、お客さまだぞ。」と内儀に声を掛ければ、内より細き声して、
「そのお三人のうち、伊豆屋《いずや》吉郎兵衛さま、お帰り下さいまし。そのお方には昔お情にあずかった事がございます。」という。吉郎兵衛へどもどして、
「いや、それはお固い。昔の事はさらりと水に流して。」と言えば、利左も、くるしそうに笑い、
「そうだ、そうだ。長屋の嬶《かか》にお情もくそもあるものか。自惚《うぬぼれ》ちゃいけねえ。」とすさんだ口調で言い、がたぴし破戸《やれど》をあけて三人を招き入れ、「座蒲団《ざぶとん》なんて洒落たものはねえぞ。お茶くらいは出す。」
 女房《にょうぼう》は色青ざめ、ぼろの着物の裾《すそ》をそそくさと合せて横坐りに坐って乱れた髪を掻《か》き上げ、仰向いて三人の顔を見て少し笑い、
「まあ。」と小さい声で言ったきり、お辞儀をするのも忘れている。亭主《ていしゅ
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