それにしても、もう皆様が御出発でございますから。」
「何が、それにしても、だ。お前たちは、おれを馬鹿にしているんだ。ゆうべも、その事を考えて、くやしくて眠れなかったんだ。おれも親爺と一緒に来ればよかった。親から離れて旅に出ると、どんなに皆に気がねをしなけりゃならぬものか、お前にはわかるまい。おれは国元を出発してこのかた、肩身のせまい思いばかりしている。人間って薄情なものだ。親の眼のとどかないところでは、どんなにでもその子を邪険に扱うんだからな。いや、お前たちの事を言っているんじゃない。お前たち親子は立派なものさ。立派すぎて、おつりが来らあ。このたびの蝦夷見物がすんだなら、おれはお前たち親子の事を逐一、国元の殿様と親爺にお知らせするつもりだ。おれには、なんでもわかっているんだ。お前の親爺は、ずいぶんお前を可愛《かわい》がっているらしいじゃないか。隠さなくたっていい。ゆうべこの宿に着いた時、お前の親爺は、これ勝太郎、足の豆には焼酎《しょうちゅう》でも吹いて置け、と言ったのをおれは聞いたぞ。おれには、あんな事は言わない。皆の見ている前では、いやにおれに親切にしてみせるが、へン、おれにはちゃん
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