具合だと末の見込みも無いような気がします。ささいな悲しみにも動転して、泣くやら、ふてくされるやら、――」
ホレ。「お言葉に逆らうようですが、ハムレットさまは、いや王子さまは、いや、ハムレットさまは、決して、そのように劣ったお方ではございません。僕の尊敬している唯一《ゆいいつ》のお方です。僕こそ、つまらぬ、おっちょこちょいなのです。僕は、いつでも、ハムレットさまに叱《しか》られてばかりいるのです。僕は、ハムレットさまを大好きです。だから僕は、ハムレットさまの前に立つと、いつも、しどろもどろになります。ハムレットさまは、とても頭がいいから、僕の言おうとしている事は、言わないさきから御承知になっています。やりきれないくらいです。」
王妃。「それは何も、あの子の美点ではありません。あなたが、親友をかばう気持も、わかりますが、何も、あの子の欠点を特に挙げて褒《ほ》めるには及びません。あの子は、小さい時から、人の顔いろを読みとるのが素早かったのです。それは、かえって性質のいじけている証拠なのです。立派な男子には、不必要な事です。」
ホレ。「お言葉に逆らうようですが、そんなにいちいち、ハムレッ
前へ
次へ
全200ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング