んか。本当に、そんな大事な時に、なんという事でしょう。ハムレットさえ、機嫌よく私たちに、なついてくれたら、このエルシノア王城の人心も治り、王も意を強うして外国との交渉に専心出来ますのに。ばかな子ですよ。デンマーク国の王子だという、自覚が足りないと思います。二十三にもなって、女の子のように、いつまでも、先王や母の後を追っています。ホレーショー、あなたは、ことしいくつになります。」
 ホレ。「はい、おかげさまで、二十二歳になりました。」
 王妃。「そうでしょう。ハムレットは、あなたより一つ兄の筈だと思っていました。まるで逆です。あなたのほうが、五つも年上のように見えます。おからだも御丈夫のようだし、学校の成績もいいそうですし、何よりも態度が落ちついていらっしゃる。お父さんも、お母さんも変りなく、お達者でいますか?」
 ホレ。「ありがとう存じます。相かわらず田舎の城で、のんきに暮して居ります。御仁政のおかげでございます。」
 王妃。「私は、あなたのお母さんを、うらやましく思います。こんな立派なお子さんがおありだと、どんなに楽しみな事でしょう。それに較《くら》べてハムレットは、もう私は、あんな
前へ 次へ
全200ページ中67ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング