なって来たのも、そのためです。教育は心の駈引きでないという事がわかって来たのも、そのためです。最高の褒め役なんてものが、ばからしくなったのも、そのためです。もう、死ぬんじゃないかという気がして来たのも、オフィリヤ、何もかも、お前のためです。オフィリヤ、泣く事は無い。さあ、お父さんに、お前の苦しいと思っている事をなんでも言って聞かせなさい。さっきから、お父さんは、お前が言い出すのを今か今かと待っていたのだ。だから、あんな意味もない愚痴めいた事を矢鱈《やたら》に述べて、お前のほうからも気軽く言い出せるようにしてやっていたのだが、どうも、お父さんは、やっぱり駈引きが多くていけないね。ごめんよ。お父さんは、ずるくていけないね。さあ、もうお父さんも計略はしないから、お前もお父さんを信頼して思い切って言ってみなさい。これ、立ってどこへ行くのだ。逃げなくてもよい。さ、お坐り。それでは、お父さんから言ってあげます。オフィリヤ、お前はさっき兄さんから、ひどく怒られていたようだね。送金の事なんかじゃ無かったんでしょう?」
オフ。「お父さん、ひどい。もう、たくさんです。」
ポロ。「よし、わかった。オフィ
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