いる事を知って、心底に生き甲斐《がい》を感じて出発したのです。けれども、オフィリヤ、ねえ、オフィリヤ、もっと、こっちへお寄り。お父さんが、さっきから、何を言いたがっているのか、わかりますか?」
オフ。「あたしを、叱《しか》っていらっしゃるのです。」
ポロ。「それだ。すぐ、それだ。お父さんはね、それだから、お前がこわいのです。このごろ、めっきり、こわくなった。お前には、わしの駈引きが通じない。すぐ見破ってしまう。以前は、そうでもなかったがねえ。オフィリヤ。――そうです。さっきからお父さんは、お前の事ばかり言っていたのです。本当に、お前の事ばかり心配して言っていたのです。叱ってやしない。叱ってやしないけれど、なぜ、お父さんに、もっとはっきり言ってくれないのですか? お父さんには、それが淋しいのだ。レヤチーズの事なんか、わしは、そんなに心配していません。あれは大声で叱ってやると、いつでも、しゃんとなる子です。けれども、オフィリヤ、わしは、このごろ、お前を叱る事が出来ない。強い口調で、ものを言いつける事も出来ない。お父さんが、ふっと心細くなるのも、そのためです。百九歳まで生きるのが、いやに
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