一ばんの親友でしたね。わしも、あれの誠実な性格を高く評価して居ります。もう、ウイッタンバーグを出発した筈《はず》です。」
ハム。「ありがとう。」
王。「それでは握手しましょう。話合ってみると、なんでもない。これから、だんだん仲良くなるでしょう。どうも、きょうは、君にも失礼な事を言いましたが、悪く思わないで下さい。饗宴《きょうえん》の合図の大砲が鳴っています。皆も待ちかねている事でしょう。一緒にまいりましょう。」
ハム。「あの、僕は、も少しここで、ひとりで考えていたいんです。どうぞ、おさきに。」
ハムレットひとり。
ハム。「わあ、退屈した。くどくどと同じ事ばかり言っていやがる。このごろ急に、もっともらしい顔になって、神妙な事を言っているが、何を言ったって駄目《だめ》さ。自己弁解ばかりじゃないか。もとをただせば、山羊のおじさんさ。お酒を飲んで酔っぱらって、しょっちゅうお父さんに叱《しか》られてばかりいたじゃないか。僕をそそのかして、お城の外の女のところへ遊びに連れていったのも、あの山羊のおじさんじゃないか。あそこの女は叔父さんの事を、豚のおばけだと言っていたんだ。山羊なら、ま
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