れを疑っては、いけません。君は、デンマーク国の王子です。二無き大事な身の上です。もっと自覚を深めて下さい。レヤチーズなどと一緒にして考えてはいけません。レヤチーズは、君の一臣下に過ぎません。フランスへ行くのも、将来その身に箔《はく》をつけたい為《ため》です。だから、あの抜け目の無い、ポローニヤスだって、ゆるしたのです。君には、そんな必要がありません。どうか、ウイッタンバーグへ行くのは、怺《こら》えて下さい。これは、もうお願いではありません。命令です。わしには、君を立派な王に育て上げる義務があります。この王城にとどまり、間もなく佳《よ》い姫を迎える事にしようではないか、ハムレット。」
ハム。「僕は何も、レヤチーズの真似《まね》をしようとは思っていません。なんでもないんです。僕は、ただ、――」
王。「よし、よし、わかっています。昔の学友たちと逢《あ》いたくなったのでしょう。わしにも打ち明けられぬ事が出来たのでしょう。そんならウイッタンバーグまで行く必要は、いよいよありません。ホレーショーを、わしが呼んで置きました。」
ハム。「ホレーショーを!」
王。「うれしそうですね。あれは、君の
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