に集ってぼんやりそれを見物している民衆の愚かしい顔が、さらに、たまらなかったのです。あれが現在の支那の民衆の表情です。やっぱり精神の問題だ。いまの支那にとって大事なのは、身体の強健なんかじゃない。あの見物人たちは、みんないいからだをしていたじゃありませんか。医学は、いま彼等に決して緊要《きんよう》な事ではないという確信を深めましたよ。精神の革新です。国民性の改善です。いまのままでは、支那は永遠に真の独立国家としての栄誉を、確立する事が出来ない。打清興漢であろうと、立憲であろうとも、ただ政治の看板を換えただけで、品物の生地が元のままでは、仕方がないじゃありませんか。僕は、しばらくあの茫然《ぼうぜん》たる表情の民衆から離れて暮していたので、自分の心の焦点がきまらないで、それであれこれ迷っていたのですね、おかげで、きょうは焦点がきまった。あれを見て、いい事をしました。僕はすぐ医学をやめて帰国します。」
 私も、もはやそれを制止すべきではないと思った。しかし、
「藤野先生が。」とつい一言、口からすべり出た。
「ああ、」と周さんは、うつむいて、「それですよ。あの先生の親切を裏切るのが、せつなくて
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