のですからね、痛快な国ですよ。」
 私は机辺に散らばっているたくさんの書籍を見渡した。ほとんど全部が、文芸の書である。独逸《ドイツ》のレクラム本が最も多かったが、また日本の森鴎外、上田敏、二葉亭四迷《ふたばていしめい》などの著作物もまじっていた。
「文芸は、どこの国のがいいのですか?」と私は周さんと向き合って炬燵《こたつ》にもぐり、れいの如く愚問を発した。
「さあ、」と周さんは、その日はひどく快活に、「文芸はその国の反射鏡のようなものですからね、国が真剣に苦しんで努力している時には、その国から、やはりいい文芸が出ているようです。文芸なんて、柔弱男女のもて遊びもので、国家の存廃には何の関係も無いように見えながら、しかし、これが的確に国の力をあらわしているのですからね。無用の用、とでも言うのでしょうか、馬鹿にならんものですよ。僕は、エジプトやインドの文芸はどんなものだか知りたくて、ずいぶん東京のあちこちの本屋へ行って捜してみたのですが、一冊も見つかりませんでした。インドなどは、支那《しな》なんかより、もっと古い文明のあった国なのですから、いま誰かひとり、民族の誇りに眼覚めて、他民族の圧迫に
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