言わないようにしてくれませんか。」
「なぜさ。」津田氏は、口をへの字に曲げて私を睨《にら》んだ。
「なぜでも。」と私は努力して微笑し、「とにかく、その同志糾合は、二、三日待ってくれませんか。でないと、僕はあなたの敵になりますよ。」
 いまはただ、周さんが可哀想であった。また、周さんの勉強にあれほど力こぶをいれていた藤野先生にも、お気の毒であった。私の関心は、もはや、それだけであって、あとは、どうでもよくなったのである。
「そうかねえ。」と、津田氏はいまいましそうにそっぽを向いて、「君は、どうも、僕を信頼していないようだねえ。」
 私はそれにかまわず、
「あなたが約束してくれなければ、僕はあなたの敵になって、藤野先生にも、うんとあなたの悪口を言います。」
「それは、しかし、乱暴じゃないか。」
「乱暴でもいいんです。敵になるんだから。どうですか、約束してくれますね?」と私は図に乗って強く念を押した。
 津田氏はしぶしぶ首肯《うなず》いて、
「東北人は、おれあ、苦手だ。」と小声で言った。
 翌《あく》る日、私は藤野先生の研究室に行き、事情をかいつまんで報告して、
「津田さんも、非常に憤慨して
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