言って笑った。こんな会話も、繁夫さんたちが聞いたら、さぞ鼻持ならない、気障《きざ》ったらしいもののような気がするのだろう。そんなら僕たちは、どうすればいいのだ。僕たちは、ちっとも思い上ってなんかいないのだ。いつでも、とても遠慮をしているのに。ああ、東京へ帰りたい。田舎は、とてもむずかしい。ゴルフをつづける気力も無く、僕たちは悲しい冗談を言い合いながら、家へ帰った。
 お昼には、また一つ失敗した。これは大きな失敗だった。しかも、それは、一から十まで僕ひとりが悪かったのだから、たまらない。
 お昼ごはんをすましてから、僕は兄さんをお庭にひっぱり出して、写真をとってあげていたら、垣根《かきね》の外で石塚《いしづか》のおじいさんの孫が二人、こそこそ話合っているのが聞えた。
「おらも、三つの時、写真とってもらっただ。」男の子が得意そうに言う。
「三つん時?」妹の声である。
「そうだだ。おらは帽子かぶってとっただ。だけんど、おらは覚えてねえだ。」
 兄さんも僕も噴き出した。
「遊びにいらっしゃい。」と兄さんは大きい声で言った。「写真をとってあげますよ。」
 垣根の外は、しんとなった。石塚のおじいさ
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