輯《とくしゅう》の演芸欄。僕の写真が滝田輝夫の写真と並んで小さく出ている。名前が、ちがっている。僕の写真には、市川菊松。滝田のには、沢村扇之介。春秋座の二新人という説明がついていて、それから「どうぞよろしく」だとさ。あきれた。ばかにしてやがると思った。こんどの初舞台から、僕たちは準団員になる筈《はず》だという事は、わかっていたが、こんな芸名まで、ついていたとは知らなかった。なんにも僕たちには通知がなかったのだ。どうせ、でたらめに、でっち上げられた芸名だろうが、それにしても本人に、ちょっと相談してから、確定すべきものではなかろうか。暗い気がした。けれども、市川菊松という、この妙に、ごつい芸名の陰に、団長、市川菊之助の無言の庇護《ひご》が感ぜられて、その点は、ほのぼのと嬉《うれ》しかった。市川菊松。いい名じゃねえなあ。丁稚《でっち》さんみたいだ。
「いよいよ、」鈴岡さんは笑いながら、「本格的になって来たね。お祝いの意味で、これから支那《しな》料理でも食べに行こう。」鈴岡さんは、なにかというと、すぐ支那料理だ。
「だけど、こんなに大袈裟《おおげさ》になって来ると、心配ね。」姉さん夫婦は、僕の
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