などからも来て、ざっと六百通ちかく集ったのですよ。」
「でも、まだわからないんでしょう?」と僕が言ったら、
「さあ、どうでしょうかね。」とあいまいな返事をした。
合格ならば、一週間以内に、正式の通知が来るのだそうだ。僕たちは市電の停留所でわかれた。
兄さんに知らせたら大喜びだ。こんなに喜んだ兄さんを見た事がない。
「よかったねえ、よかったねえ、進は、やっぱり役者になるのがよかったんだ。六百人の中から二人とは凄《すご》いじゃないか。偉いねえ、ありがとう、僕は、もう、どんなに嬉しいか、――」と言いかけて、少し泣いた。滅茶滅茶だ。まだ、喜ぶには早いのに。
正式の通知の来ないうちは、気をゆるめてはいけないのだ。
七月十四日。金曜日。
晴れ。合格通知来る。
七月十五日。土曜日。
晴れ。猛烈に暑い。きのうは合格通知を封筒のまま仏壇にあげて、兄さんと二人で、お父さんに報告をした。本当に、日本一の俳優になれそうな気がして来た。苦しいのは、寧《むし》ろ、これからであろう。けれども「善く且《か》つ高貴に行動する人間は唯《た》だその事実だけに拠《よ》っても不幸に耐え得るものだということ
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