さんにも、ごちそうしてやった。僕は本当に、平気なのに、兄さんは、ひそかに気をもんでいるようだ。何かと試験の模様を聞きたがるのだが、こんどは僕が、神の国は何に似たるか、などと逆に問い返したりなどして、過ぎ去った試験の事は少しも語りたくなかった。
 夜は日記。これが最後の日記になるかも知れぬ。なぜだか、そんな気がする。寝よう。


 七月六日。木曜日。
 曇り。けさは、眠くて、どうしても起きられず、学校を休む。
 午後二時、春秋座より速達あり。「健康診断を致しますから、八日正午、左記の病院に此《こ》の状持参にておいで下さい。」とあって、虎《とら》の門《もん》の或る病院の名が書かれていた。
 所謂《いわゆる》、第二次考査の通知である。兄さんは、もう之《これ》で合格したも同然だ、と言って全く安心しているが、僕には、そうは思われなかった。病院に行ってみると、きのうの受験生が、また全部集っているような気さえする。もういちど、はじめから戦い直してもいいくらいの英気を、たっぷりと養って置きたい。さいわい、からだは、どこも悪くない筈だけど。
 夜は、ひとりでレコードを聞いて過す。モーツァルトのフリュウト
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