朗読だけで、たいていわかりますから。君に言って置きますが、いまから台詞《せりふ》の選《よ》り好みをするようでは、見込みがありませんよ。俳優の資格として大事なものは、才能ではなくて、やはり人格です。横沢さんは満点をつけても、僕は、君には零《れい》点をつけます。」
「それじゃ、」横沢氏は何も感じないみたいに、にやにやして、「平均五十点だ。まあ、きょうは帰れ。おうい、つぎは四ばん、四ばん!」
 僕は軽く一礼して引きさがったのだが、ずいぶん得意な気持も在った。というのは、上杉氏は僕を非難しているつもりで、かえって僕の才能を認めていることを告白してしまったからである。「大事なものは、才能ではなくて、やはり人格だ。」と言ったが、それでは今の僕に欠けているものは人格で、才能のほうは充分という事になるではないか。僕は、自分の人格に就いては、努力しているし、いつも反省しているつもりだから、そのほうは人に褒められても、かえって、くすぐったいくらいで、別段うれしいとも思わぬし、また、人に誤解せられ悪口を言われても、まあ見ていなさい、いまにわかりますから、というような余裕もあるのだが、才能のほうは、これこそ全
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