今夜は変だ。文章も、しどろもどろの滅《め》っ茶苦茶《ちゃくちゃ》だ。麻の如《ごと》くに乱れて居《お》ります。
こんな事でどうする。あすは、いや、もう十二時を過ぎているから、きょうだ、きょうの午後一時には試験があるのだ。何かしようと思っても、なんにも手がつかず、仕方が無い、万年筆にインクでもつめて置いて、そうして寝る事にしましょう。考えてみると、明日の試験に失敗したら、僕は死なねばならぬ身なのである。手が震える。
五月九日。火曜日。
晴れ。きょうも学校を休む。大事な日なんだから仕方が無い。ゆうべは夢ばかり見ていた。着物の上に襦袢《じゅばん》を着た夢を見た。あべこべである。へんな形であった。不吉な夢であった。さいさきが悪いと思った。
きょうは、でも、ちかごろにない佳いお天気だった。九時に起きて、ゆっくり風呂《ふろ》へはいって、十一時半に出発した。きょうは兄さんは、門口まで見送って来ない。もう大丈夫だときめてしまっているらしい。斎藤氏のところへ出掛ける時には、兄さんは、僕以上に緊張し、気をもんでくれたのに、きょうは、まるでのんびりしていた。試験よりも、斎藤氏の方が大問題だと思って
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