ねえ。案外あつかましいところがある。めくら蛇《へび》に怯《お》じずの流儀だが、でも、大成功だ。けがの功名で、お前は、ちょっと好感を持たれたかも知れない。」
「馬鹿言ってら。てんで何も話してくれないんだよ。気味が悪かったぜ。」
「いや、たしかに好意を持たれている。一緒に自動車に乗せたというのは、ただ事でない。思うに、あの女のひとが、うまく取りなして置いてくれたんだね。津田さんの紹介状だって、案外、見えないところで大働《おおはたら》きをしているのかも知れない。せっかく書いていただいて、悪口を言うのはいけない。いまになって考えると、立派な紹介状のようだった気もする。まず、大成功だ。それじゃ、これから鴎座へ電話を掛けて研究生募集の事を、問い合せて見るんだね。」ひとりで興奮している。
「だって、鴎座がいいとは言わなかったんだよ。」
「わるいとも言わなかったろう?」
「わからん、と言ってた。」
「それでいいんだよ。僕には、斎藤氏の気持がわかるね。やっぱり苦労人だよ、斎藤氏は。その辺から、まあ、ぼつぼつ始めてみたらいいだろうという事なんだよ。」
「そうだろうか。」
 鴎座の事務所の電話番号を捜し出す
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