越えてるかも知れん。」
「こんど、兄さんが行ったらいい。」
「場合に依っては、僕が行かなくちゃならないかも知れないが、まだ、その必要は無いようだ。お前は、そんなにしょげてるけど、きょうは、ちっとも失敗じゃなかったんだよ。お前にしては大出来だ。五月三日にまた来る、とはっきり言って来ただけでも大成功だよ。その女のひとは、お前に好意を持っているらしい。」
僕は、噴き出した。
「いや本当さ。」兄さんは真面目《まじめ》である。「ふつうの玄関払いとは性質が、ちがうようだ。脈があるよ。お仕事中は面会謝絶と極《きま》っているんだけど、特にお前のために、どうにかして取りついであげようと思ったんだが、奥さんか誰かに邪魔されて、それが出来なかったんだな。」兄さんの解釈は、どうも甘い。「きっとそうだよ。だからこんどはお前も、その女のひとを、にらんだりなんかしないで、も少しあいそよくしてあげるんだね。ちゃんとお辞儀をしてね。」
「しまった! きょうは帽子もとらない。」
「そうだろ。帽子もぬがずに、ただ、はったと睨《にら》んでいたんじゃ、ふつうだったら、まず交番に引渡されるところだ。その女のひとに理解があったか
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