「劇団? 映画俳優じゃないのかね。」
「映画俳優は、サンボルですよ。それの現実にこだわっているわけじゃないんです。とにかく日本一、いや、世界一の役者になりたいんですよ。」兄さんは、僕の気持をそのまま、すらすら言ってくれる。僕には、とてもこんなに正確に言えない。「だからまず、斎藤氏の意見なども聞いて、いい劇団へはいって五年でも十年でも演技を磨《みが》きたいという覚悟なのです。あとは映画に出ようが、歌舞伎《かぶき》に出ようが、問題ではないわけです。」
「ばかに手まわしがいいね。あながち、春の一夜の空想でもないわけなんだね?」
「冗談じゃない。僕が失敗しても、弟だけは成功させたいと思っているんです。」
「いや、二人とも成功しなければいかん。とにかく勉強だ。」と大声で言って、「君たちは、いまのところ暮しの心配もないようだから、まあ気長にみっちりやるんだね。めぐまれた環境を無駄《むだ》にしてはいかん。だけど、役者とは、おどろいたなあ。とに角それじゃ斎藤さんに、紹介の手紙を書きましょう。持って行ってみなさい。頑固《がんこ》な人だからね、玄関払いを食うかも知れんぞ。」
「その時には、また、もう一度、
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