。静かな、いいお天気である。兄さんの説に依《よ》ると、昔から、天長節は必ずこんなに天気がいい事にきまっているのだそうである。僕はそれを、単純に信じたいと思った。
十一時頃一緒に家を出て、途中、銀座に寄って、姉さんの結婚一周年記念のお祝い品を買った。兄さんはグラスのセット。下谷《したや》へ遊びに行った時、このグラスで鈴岡さんと葡萄酒《ぶどうしゅ》を飲もうという下心。僕は、上等のトランプ一組。下谷へ遊びに行った時、姉さんと俊雄君と三人で此のトランプで遊ぼうという下心。どちらも、自分がこれから下谷へ行っても、充分に楽しめるように計画して買うのだから、ちゃっかりしている。グラスもトランプも、店から直接に下谷へ送ってもらうように手筈《てはず》した。
昼御飯をオリンピックで食べて、それから本郷《ほんごう》の津田さんを訪れた。僕は、中学へはいったとしの春に、いちど兄さんに連れられて、津田さんのお家《うち》へ遊びに行った事がある。その時、玄関にも廊下にもお座敷にも、本がぎっしりなので驚いた。
「これを、みんなお読みになったの?」と僕が無遠慮に尋ねたら、津田さんは笑って、
「とても読めるもんじゃない
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