是等《これら》の物の肉を食《くら》うべからず、またその死体《しかばね》に捫《さわ》るべからず。
水におる諸《もろもろ》の物の中是《うちかく》のごとき者を汝ら食《くら》うべし即ち凡て翅《ひれ》と鱗《うろこ》のある者は皆汝ら之を食《くら》うべし。凡て翅と鱗のあらざる者は汝らこれを食《くら》うべからず是は汝らには汚《けがれ》たる者なり。
また凡て潔《きよ》き鳥は皆汝らこれを食《くら》うべし。但し是等は食《くら》うべからず即ち※[#「周+鳥」、第3水準1−94−62]《わし》、黄鷹《くまたか》、鳶《とび》、※[#「亶+鳥」、第3水準1−94−72]《はやぶさ》、鷹《たか》、黒鷹の類《たぐい》、各種《もろもろ》の鴉《からす》の類《たぐい》、鴕鳥《だちょう》、梟《ふくろ》、鴎《かもめ》、雀鷹《すずめたか》の類《たぐい》、鸛《こう》、鷺《さぎ》、白鳥、※[#「(「署」の「者」に代えて「幸」)+鳥」、148−9]※[#「虞」+「鳥」、148−9]《おすめどり》、大鷹、※[#「茲+鳥」、第3水準1−94−66]《う》、鶴《つる》、鸚鵡《おうむ》の類《たぐい》、鷸《しぎ》および蝙蝠《こうもり》、また凡て羽翼《つばさ》ありて匍《はう》ところの者は汝らには汚《けがれ》たる者なり汝らこれを食《くら》うべからず。凡て羽翼《つばさ》をもて飛《と》ぶところの潔《きよ》き物は汝らこれを食《くら》うべし。
凡そ自《みずか》ら死《しに》たる者は汝ら食《くら》うべからず。」
実に、こまかいところまで教えてある。さぞ面倒くさかった事であろう。モーゼは、これらの鳥獣、駱駝や鴕鳥の類まで、いちいち自分で食べてためしてみたのかも知れない。駱駝は、さぞ、まずかったであろう。さすがのモーゼも顔をしかめて、こいつはいけねえ、と言ったであろう。先覚者というものは、ただ口で立派な教えを説いているばかりではない。直接、民衆の生活を助けてやっている。いや、ほとんど民衆の生活の現実的な手助けばかりだと言っていいかも知れない。そうしてその手助けの合間合間に、説教をするのだ。はじめから終りまで説教ばかりでは、どんなに立派な説教でも、民衆は附《つ》きしたがわぬものらしい。新約を読んでも、キリストは、病人をなおしたり、死者を蘇《よみがえ》らせたり、さかな、パンをどっさり民衆に分配したり、ほとんどその事にのみ追われて、へとへとの様
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