雀こ
井伏鱒二へ。津軽の言葉で。
太宰治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)昔噺《むがしこ》

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長え長え昔噺《むがしこ》、知らへがな。
山の中に橡《とち》の木いっぽんあったずおん。
そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。
からすあ、があて啼《な》けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
…………………………
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 ひとかたまりの童児《わらわ》、広《ふろ》い野はらに火三昧《ひざんまい》して遊びふけっていたずおん。春になればし、雪こ溶け、ふろいふろい雪の原のあちこちゆ、ふろ野の黄はだの色の芝生こさ青い新芽の萌えいで来るはで、おらの国のわらわ、黄はだの色の古し芝生こさ火をつけ、そればさ野火と申して遊ぶのだおん。そした案配《あんばい》こ、おたがい野火をし距《へだ》て、わらわ、ふた組に
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