わかれていたずおん。かたかたの五六人、声をしそろえて歌ったずおん。
 ――雀、雀、雀こ、欲《ほ》うし。
 ほかの方図《ほず》のわらわ、それさ応《こた》え、
 ――どの雀、欲うし?
 て歌ったとせえ。
 そこでもってし、雀こ欲うして歌った方図のわらわ、打ち寄り、もめたずおん。
 ――誰をし貰ればええべがな?
 ――はにやすのヒサこと貰れば、どうだべ?
 ――鼻たれて、きたなきも。
 ――タキだば、ええねし。
 ――女くされ、おかしじゃよ。
 ――タキは、ええべせえ。
 ――そうだべがな。
 そうした案配こ、とうとうタキこと貰るようにきまったずおん。
 ――右《みぎ》りのはずれの雀こ欲うし。
 て、歌ったもんだずおん。
 タキの方図では、心根っこわるくかかったとせえ。
 ――羽こ、ねえはで呉れらえね。
 ――羽こ呉れるはで飛んで来い。
 こちで歌ったどもし、向うの方図で調子ばあわれに、また歌ったずおん。
 ――杉の木、火事で行かえない。
 したどもし、こちの方図では、やたら欲しくて歌ったとせえ。
 ――その火事よけて飛んで来い。
 向うの方図では、雀こ一羽はなしてよこしたずおん。タキは雀こ
前へ 次へ
全6ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング